第16章 年末年始といえば...※R18
そんなこんな話している内に、居酒屋も閉店の時が迫っていた。もうそろそろ、お店を出ようと私は店員さんを呼んだ。
「すいませーん。」
「は〜いっ!」
直ぐに元気な返事が返ってきたので、「お会計お願いします。」と言った。
「ちょっと外で一服してくる。」
「あぁ。」
私は降谷にそう告げて、お会計を任せた。
ちょうど煙草を灰皿に入れた時に、降谷がお店から出てきた。
「会計済んだそ。タクシー呼んだから、もうそろそろ来ると思う。てか、いい加減お前は煙草やめろ。」
「なんで?」
「体に悪いから。」
「お酒だってそうでしょ。」
矛盾を生む降谷の言い方に私はそのままのことを言った。大体お酒は良くて、煙草は邪魔者扱いだなんて、理不尽過ぎる。マナーを守らないのもダメだけど、歩きお酒は良くて、歩き煙草はなぜダメなのか。誰か教えてくれ。
「ほら、タクシー来たぞ。」
目線をチラリと車道に向けて、タクシーがこっちに来て、ドアが開いたのを確認して、私達は後頭部座席に乗り込んだ。
「お客さん、どちらまで?」
「東都大学駅前まで。」
タクシーの運転手にそう告げて、降谷が通っている大学の最寄り駅までタクシーで行くことになった。まぁいつものコースだけどね。そこからは、歩いて降谷のお家まで行く。差程遠くなくて、徒歩五分も掛からないマンション。大学生で金持ちで、車なんかRX-7に乗ってて、どっからそんな金湧いてくるんだとも思う。バイトしなくても十分生きていける。
タクシーの中ではずっと無言で、ここでも降谷がお金を出してくれた。
「なにからなにまで、ありがとう。なんで、降谷はこんな私なんかのために、そこまでしてくれるの?」
「さっきも言ったじゃん、俺が一ノ瀬と一緒に居たいからだって。」
「それさっきから言ってるけど、告白なの?」
ふざけた答えが返ってきたから、私もふざけたように言うと、真剣な顔をして「そうだよ。」と、返ってきた。
「は? まじ?」(嫌々無い無い。こんなイケメンが、こんな女の色気も無い、おばさんに。)
「おーい、顔に考えてる事全部出てるぞ。」
話をしているうちに、見慣れた駐車場にやって来て、「着いたぞ。」と言われた。
(待って、待って、心の整理が出来てない。)
「今日はダメとか無し...?」
「ここまで来といてそれは無しだな。」