第12章 〜不穏な気配〜
赤「よし、元気そうなのも確認したし、そろそろ帰るか。」
『ありがとうございました。零さんに、お仕事頑張って、早く会いに来て下さいって伝えて下さい。』
赤「ああ...、じゃあな。たまには待っているだけじゃなくて、自分からも電話してやってくれよ。降谷くんに元気がないと、現場の士気が下がるのでな。」
『ふふっ、分かりました...。』
最後にそう赤井さんに約束して、私は室内へと入った。独りで寂しくなったのか、また吐き気に襲われる。
『うえっ...ゲホッ...。』
何も食べていないのに、胃液だけが口から出てきて。
『そう言えば私、生理はいつ来たっけな...。』
携帯のカレンダーを確認して、予定日から2週間程過ぎていた。最近、殆ど物を口にしていなかったので、ホルモンバランスの乱れが原因の可能性も有るけれど。
『もしかしたら...。』
もう一人の体がじゃないかもしれない。零さんの帰りを一緒に待ってくれているかもしれない。
私は急いで薬局に向かい、妊娠検査薬を買ってきた。私は検査結果を見ながら呟いた。
『陽性だ...。居るんだ、お腹の中に...。私と零さんの赤ちゃんが...。』
明日、産婦人科に行こう。私はそう思い、眠りについた。
────────...。
朝起きて、私は近くの産婦人科に連絡した。
看「降谷さ〜ん。降谷真恋音さ〜ん。」
『はい!』
名前を呼ばれて、緊張で返事が裏返ってしまう。緊張して、表情筋も可笑しくなって、お医者さんの前でカチコチに固まってしまう。
医「そんなに緊張なさらないで。って言っても無理よねぇ。妊娠の初期症状があるんだって?検査しましょうか。」
そう言って看護婦さんに案内された。婦人科特有の検査台に乗って、向こう側が見えないように、隠された。
医「ちょっと冷たいかもしれないけど我慢してね。」
『はいっ。』
冷たい。かなりひんやりとした器具が私の中に入ってくる。
医「はい、おしまい。結果が出るまで少し待っててね。」
診察室にまた戻り、検査結果を聞く。
医「おめでとうございます。妊娠7週目ですよ。」
『ほんとですか?』
医「なんで嘘をつくのよ。これから長い戦いになるけど、頑張って行きましょうね。」
『はいっ!』