第4章 和平交渉
憂城は顔を俯かせていた。少し様子がおかしい。顔を覗き込んで息を呑む。彼は顔を歪め歯を食い縛りボロボロと瞳から涙が溢れていたのだから。
い、言い過ぎたか?いやいや私は悪くないし、間違ったこと言ってないし。やはり大人げなかったか。いやいや、
「君を叩かれた後、すぐ追いかけられなくて、僕、でも嫌だ。君がお友達になってくれないのもが僕の前からいなくなるのも嫌だよぅ」
訳もわからないまま前後不覚で探して探した。後先考えず色々な場所をお友達を作って使って憂城は迷子になった幼子のように泣き啜りながら拙く語る。
だが彼の行為は誉められたものではない。確かに探してくれたのは嬉しいが方法か方法で。人間でなくても命を奪い酷使させてしまった。その事実が重い。何にしろ失うのはいい気分ではない。この価値観の齟齬がもどかしい。だからこそ、
「憂城、私は君の“お友達”にはなれないが友達にはなりたいとは思っている。それではダメなんだろうか?他愛ないのない会話して一緒に出掛けて日々を送るのは」
少しずつでいいから進まなくては。
「生きた友達ではないが、だがそんな変わり種な友達が居ても良いのではないのか?」
人とに歩み寄ると言うのは楽しいだけではないのだ苦しさも伴う。彼は更に特殊な事例で困難極まりないが。
「私から申し込みたい。憂城、私の友達なってくれ」
私は彼の手を両手で包み込み彼の瞳から目を離さず真摯に伝える。矛盾と食い違いと間違いだらけな関係ではあるがそれでも決めたのだ。彼の友達になると。砂粒のような和平交渉術など持ち合わせてない。だから私は私の本心で彼に挑むしかない。
「やだ」
目元と鼻先を赤らめた状態の彼はキョトン顔で即答した。まぁ、そんな簡単にいかないよね。私は見事に玉砕したのだった。死生n回目の挫折である。