Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第4章 思い
「分かったわ。お先に失礼致します」
ローの言うことには絶対服従。
それはこの病院で働く看護師の鉄の掟だ。
書類を片付ける手を止めずに目線だけを寄越したローに笑顔で応え、エミリアは院長室を後にした。
向かう先は特別室のある病棟。
そして半刻後、彼はやはりそこにやって来た。
当たっても嬉しくない自身の予想に整った顔を歪めながら
ローが入って行った特別室の扉に耳を寄せる。
そこから微かに聞こえてきた、耳を疑うようなあのやり取り。
ローのことは、私が一番良く理解してる。
彼の他者を踏み込ませない孤高な性格も
数多の女を抱く彼が、その中に“誰か”を探していることも。
ローは私に一番気を許してくれていると思っていた。
夜を共に過ごす機会が一番多い私でさえ、見たことのない彼。
そんな彼がこの扉の向こうには居て、受付の女なんかを抱き、自ら求めている。
聞きたくもない雑用女の喘ぐ声と、そんな彼女の名を呼ぶ彼の声。
エミリアは唇を噛みしめ、その場を後にした。
雑用ごときがローに取り入るなどあってはならない。
自らの手は汚さない。それが自分のポリシーだ。
でもあの脅威は、確実に取り除かなければ。
正看護師の1人であるリデル。
残忍な彼女の性格は、この医院でも有名だ。
使えるものはなんでも使う。
そんな彼女の魔の手が、ナツへ向けられようとしていた。
昼休み
ナツは中庭に出ると、アパートを解約するため、色々な場所に電話をかけていた。
ついでに父にも、ラインで辞めるの三文字だけ送ってやった。
即刻既読がつき、怒涛のように送られてくる文章は全て既読スルーしてやった。
「はぁ…」
引っ越し業者との段取り組みを終え電話を切ると、漸く気が楽になった。
荷物も今日の夜にはまとめ終わる。
後は明日出勤して退職届を叩きつけて終わりだ。
いや、発送するか?……まぁどっちでもいいか。
ナツは携帯をポケットにしまうと
まだ存分に残っている昼休みの残り時間をやり過ごす為、どこか身を隠せる場所へと移動することにした。
そんなナツの電話を、近くて聞いていた人物がいるとも知らずに。