Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第4章 思い
「そう、それなら仕方ないわね」
沈黙の合間にナツの腹痛に悶えてる設定の声がちょいちょい挟まれること、数秒。
意外にもエミリアはすんなり了承してくれた。
「あ、ありがとうございます!」
お礼と共に書類を彼女に預けると、ナツはそそくさと逃げるようにその場を去った。
もちろん設定上、トイレがある方に。
届け物をしなくて良くなった途端、退却ルートが遠回りになるこの設定が鬱陶しく感じるな!
まあ良いか。このくらい。
ナツは一人ほくそ笑みながら、廊下を駆け抜けた。
「ふふっ、面白いわね、本当に。ローからの指示が聞けないって……何様のつもりかしら」
エミリアの顔から一瞬にして笑顔が消え去り、
冷徹さすら感じる無表情のそれが姿を現した。
「お仕置きが必要よね。あんなちんくしゃ風情が」
エミリアが呟いた言葉は、ナツの耳に届くことはなかった。
ローとナツが一線を越えた話は、既に看護師内で密かに広まっている。
看護師達は院内の至るところで、ナツへの報復計画を企てる話題で持ちきりだ。
内容まで知っているのはエミリア一人。
一昨日の夜、エミリアは院長室で書類に目を通すローに付き添っていた。
いつものように今夜は自分の部屋を訪れてくれるとばかり思っていたエミリアは、彼の発言に目を丸くした。
「今日は予定がある。帰ってろ」
稀にこうして誘いを断る事のあるローではあったが
彼女には少し、気がかりな事があった。
特別室の予約を無理矢理キャンセルさせてでも入院させたあの女。
先日ローが抱えて連れてきた彼女は、特別室に入院できるほどの社会的な地位を持っている訳でもなく
傷だって掌が乾いた血液で染まっていただけ。
上客である筈の特別室の客を無下に扱うなんて
そんな無茶、今まで一度だってしたことはなかったのに。
翌日出勤して更にエミリアを驚かせた、院長先生の総回診。
ローは外来客で溢れ返る受付になんて、近寄ろうともしなかった筈だ。
しかもその目的が、特別室の軽症患者を連れ戻す為。
ローは今夜、彼女の部屋を訪れるつもりなのではないだろうか。
いつも以上に手際良く書類を片付けていくローの背中を、エミリアは怪訝な表情で見つめていた。