Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第4章 思い
ナツが重い足取りで歩き始めて数分。
気乗りしない気持ちに比例する歩行スピードのせいか、院長室まではまだまだ遠い。
行きたくない。
でもさっさと済ませたい。
普通に歩けば10分程で着くその距離。
間に合わせることは可能だ。
でも間に合わせるのが正解なのか?
ナツはエレベーターから降りると、院長室へ続く通路を進む。
院長室へ続くエレベーターはこの一機のみ。
中々入り組んだ作りではあるものの、生憎こっちは看護師様々のおかげでこの病院のマップは隅々まで把握している。
迷子設定……
いや、結局は問題の先延ばしか。
余計な院長の怒りを買いたくはない。
怒り狂ってまた直接受付に来られるのも、それはそれで遠慮したい。
ナツはもう、二酸化炭素を吐く方の呼吸がオートでため息化している。
明日で最後。
明日を乗り切れば、
意味の分からん院長からの呼び出しも
看護師達との命懸けの鬼ごっこも
全ておさらばだ。
書類の一番上に置いた院長直筆のメモ。
中々の達筆だ。
院長の言う厳罰がどんな恐ろしい物かは分からない。
でも一か八か、今日と明日の二回くらい
すっぽかしてなかったことに出来ないだろうか。
「……マジかこれ!!ヤバっ!!テンション上がるわ流石に!」
来た道を引き返そうかと迷っていると、ふとナツの耳を聞き覚えのある声が掠めた。
足を止めて、声が聞こえた気がする右側の扉を凝視する。
院長室のあるこのフロアに、人が訪れる事は殆んどない。
この辺りの部屋はどれも資料置き場か物置だ。
今声が聞こえているのは資料室からだろうか。
ナツは何となく聞いたことのある声に、思わずその扉のドアノブを回した。
「俺ストップ高とか初めてなんだけど。何これ仕手の仕業なの?」
資料室の段ボールに腰掛け、タブレットをいじりながら誰かと電話をしているペンギン。
気配を殺して入ってきたせいか、それともテンションが高すぎて周りに気を配る余裕がないのか
全くこちらに気付く気配がない。
「お前まだ粘んの?俺もう捌くわ。……え?あー。こんな理由もねぇ高騰怪しすぎんだろ」
「……ペンギン」
私の声に目線をこちらへよこしたこの人は
本当にいつ仕事をしているんだろうか。