Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第4章 思い
目を覚ますと、ナツが眠っていた特別室に
院長の姿はなかった。
起き上がり、茫然と部屋を見渡すと
そんな些細な動きにすら痛みを感じる体に、昨夜の記憶が蘇ってくる。
「……よし、まじで辞めよう」
ナツは頭を抱え、ベットに倒れ込んだ。
なんてこったい。
出来ることならなかった事に
むしろ夢物語で終わらせたい昨夜の記憶は
悲鳴をあげる体の節々や下腹部の違和感が、そうさせてはくれない。
ナツは一息つくと
本格的にこの病院から足を洗う準備を始めることを心に決める。
出て行くと言っても、アパートの荷物を纏めるには最低でも2~3日はかかるだろう。
その間は不自然がられないように出勤しよう。
自身の身体やベット周りに目を向けると、それは綺麗に事後処理がされていた。
だとしても、だから何だ。
声は死ぬ気で押さえていた。
……つもりだ。
途中から、もう訳が分からなくなっていた自覚がある。
もしあれを看護師、特にエミリアなんかに聞かれようものなら
私とその家族の人生が終わる。
正直院長から受けた昨晩の仕打ちより、そっちの方が怖かった。
昨夜のことは、まぁ犬…いや虎に噛まれたと思うことにしよう。
トラファルガーさんだしね。
犬なんて可愛い物に例えられる程、あの院長には従順さのかけらもないが。
警察に被害届を提出したところで
この医院の権力の前では無力だろう。
傍若無人な振舞いが許されるあのイケメンに、
最早ため息が止まらなかった。
ナツは気合いを入れ直すと、出勤するために着替えを始める。
身体の至る所でその存在感を主張する赤い跡。
その数の多さには流石にやり過ぎ感しか感じない。
激しかった筈なのに
むしろ激しすぎた筈なのに
不思議と手の傷が開いた様子はなかった。
…まさかね。
ナツは身なりを整えると、荷物を手に特別室を後にする。
手を縛られたのは傷が開かないようにという、彼なりの配慮だったんだろうか……?
3%くらいの確率で有り得そうな気もするその可能性。
それを打ち消すように、ナツは頭を振った。
取り合えずあと3日。
何とか耐えて無事にここから抜け出そう。
受付に向かうナツの目には、腹を括った者特有の
力強さが宿っていた。