Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第3章 訪問者
消灯後にも関わらず携帯を触っていると思ったら、人の顔を見るなり化け物でも見たかのように後ずさってみたり
かと思えば不躾な視線を投げてきては、禄でもない事を考えている事が顔面に滲み出過ぎている彼女のその様子に、ローは眉を潜める。
つかつかと無言でナツの元へと歩み寄る彼はどこか、普段以上の気迫を纏っているようだった。
「あれから色々考えてみたんだが」
ベットに腰を下ろしナツの頬に手を伸ばすロー。
びくりと体が震えたのは、頬に触れた手が思ったよりも冷たかったことだけが原因ではないだろう。
優しく頬を撫でるその感触に、なんだこいつと怪訝な表情を浮かべ目の前の男を凝視するナツ。
「おまえを見てると、どうにも落ち着かねぇ」
「は、はぁ」
頬を伝う何かを誘うようなその手つきも、言葉を紡ぎながらも無遠慮に瞳の奥を覗きこんで来る彼の表情も
どう考えても危険な感じしかしない。
前回は院長が油断してくれていたから逃げれた。
流石に正面突破は難しそうだし、かといって騙し討ちももう通用しないだろう。
その眼力だけで人を捕らえることができるんじゃないかと思うほど
彼の瞳は、逃がすまいとでも言うかのようにナツをしっかりと捕らえていた。
「考えたところで、理由が分かる訳でもねぇ」
「うん?」
そうは見えないものの、どうやら情緒不安定らしい院長。
それをカミングアウトされた所で、私に何をどうしろと言うんだ。
頬に触れていたその手が、耳元から顎を通って鎖骨をすっと撫でる。
これ以上後退できない程に身を引いて身構えているナツは、その感覚にぞくりと身を震わせた。
彼が何を言いたいのかが分からない。
なぜここを再び訪れたのかも分からない。
でも
なんだか貞操の危機っぽいということは
彼の醸し出す雰囲気から何となく察知出来た。
どうしましょう、本当に。
途方に暮れたように考え込んでいるナツの姿を、ローは口元に笑みを浮かべ、眺めていた。