Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第2章 急展開
「…何で怪我人が病室を抜け出した上に仕事なんてしている」
ナツの目の前に立つ、長身のイケメンは非常に恐ろしい表情でこちらを睨んでいる。
「え、ナツ怪我してるの?」
「え、ベポ怪我してるの?」
重なった言葉と共に顔を見合わせる二人。
「「は?」」
頭上に疑問符を浮かべながら、お互いがお互いを不思議そうな顔で見つめていた。
「ふざけてんのか。てめェだ、ナツ」
そのやり取りに更に眉間のシワを深くした院長は、ナツを名指で指名してきた。
「っは!私!?……あっ、そういえば。……そうですね。す、すいません」
院長はベポに用事があるものだとばかり思っていたせいで
掌の切り傷の事などすっかり忘れていた。
咎められているのが自分だと理解したナツは
院長がわざわざ取り巻きを連れて玄関ホールにまで降りてきた理由はもしや自分なのかもしれないと
内心大量の冷や汗をかきながら目の前の集団に視線を向ける。
院長の後ろに控える総勢十数名の看護師達は、物凄い形相でナツを睨みつけていた。
(いやいやちょっと待て。百歩譲って私が病室を抜け出したのが悪かったと仮定しよう。
それにしたってこの集団は何だ?わざわざそんな事を言う為にこんな大人数で?しかも院長まで。
……あれか。この病院は脱走者に厳しいのか。自ら望んでやって来る患者ばかりだから脱走者がそんなに珍しいのか。
寧ろボロボロの身体に鞭打って業務をこなす私は褒められてこそあれ咎められる理由なんてないんじゃないだろうか。
……別にそんなに重症でもないし。傷だってまだ少し傷むけど、病室で寝てなきゃいけないような物じゃないが。
え、つまりどういうこと?脱走者は処刑ってことでいいの?)
ナツなりにこの状況を頭の中で整理した。
迅速な対応が必要そうなこの鬼気迫る事態。
最もあり得そうな可能性にたどり着くまでのその所要時間
およそコンマ1秒。
最近で一番頭を使った気がする。
猛スピードで頭の中を駆け巡る情報達に
自分で自分の脳ミソを絶賛してみた。
処刑か。この病院の処刑方法って何なんだろう。
ナツは青ざめた表情で、痛い程に向けられる院長の視線を受け止めていた。