Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第11章 番外編
不思議な、どこかひんやりとする光が満ちた洞窟を堪能した帰り道
二人は近くのアウトレットモールに立ち寄っていた。
昼食もかねて訪れたそこは、予想通り大勢の人で賑わっている。
「ふっふっふ、遂にこの時が来た」
そういって皿を片手に駆け出していったナツ。
それをどこか呆れ顔で見ているロー。
露天風呂に引き続き、ローに好き勝手に貪られたナツ。
朝目覚めた時の彼女の機嫌は、それはそれは悪かった。
それに気付きながらも、素知らぬ顔で身支度をするローに送られる無言の訴え。
最初こそ気にしてなかったローだが、それはあまりにしつこい。
思っていた以上に収穫のあった旅行に浮かれていたのも事実。
一向に止む気配のないその恨めしい視線に、今回ばかりは素直に詫びの言葉を述べた。
嘘だろと思うほどに只に直るナツの機嫌。
しょうがないから許してあげると提案されたその案は
ローが最も恐れていたもの。
恐怖のペアルックを実現させようと、既に身支度を整えたローのシンプルなTシャツを引き剥がそうと実力行使に出るナツ。
流石のローも、そのポーカーフェイスにひびが入った。
いそいそと紙袋からあのおぞましいTシャツを出そうとするナツの手を掴まえる。
着てやるものか…!!
許しの代償として提案した案を押し止めようとするローに、ナツは再び眉を寄せ唇を尖らせた。
「…分かった。ケーキバイキング…行くか…」
苦肉の策。
健康の為にと節制させてきた糖分。
そこに連れて行けば見境なくそれを求めることが分かっているこの状況。
それでもそれは、ダサTペアルックという恐ろしき罰ゲームの前では霞んで見えた。
モンブラン…と妄想上で既に悦に浸っている恋人の浴衣を脱がせ、予め用意しておいたまともな服を被せる。
気が変わらない内にさっさと出発しよう。
温めておいたコテでナツの柔らかい髪を巻きつつ
時折ケーキ以外にも何かあるのかとか
その店のイチオシは何だとか
彼女の思考がペアルックに立ち戻らぬように気を逸らす。
この壊滅的なセンスとの攻防戦はいつまで続くのだろうか。
遠い目を浮かべながらも、自己主張を封印した見栄えでナツを出掛けさせる為に
ローの手先は手際よくその毛先を巻き上げた。