第11章 番外編

重厚感のあるテーブルに置かれた和菓子。


これ甘いやつ。
凄い甘いやつ。

見た目も凝った細工の施された生菓子にナツの心は躍りに踊った。


やっぱりローは旅行中くらいは甘い物を解禁してくれるつもりでいたんだ。
そりゃそうだよな、折角の旅行でまであの管理されまくった食生活じゃ楽しめる物も楽しめない。


過去数十回にも渡る盗み食いへの処罰。
ここに来て尚それが執行されるのではと内心びくびくしていたナツはほっと息をついてローの隣に腰を下ろした。


「美味しいね！見て！栗入ってる！栗！」


和菓子を竹の楊枝で割って中を覗いては目を輝かせるナツ。
一口食べる毎に悦に入るその様子を、ローは目を細めて眺めていた。


うさぎか…いやハムスターだな。


もさもさと甘いものを堪能する恋人はまるでそんな感じだ。


恋人同士と言うより、飼い主とペット。


しれっと自分の前に置かれた和菓子にまで手を伸ばす愛しい存在との穏やかな時間に幸せを感じながら
二人の時間は幕を開けた。