第2章 急展開

これは……あの夢だ。


幸せで温かくて、懐かしい気がする夢。

この夢は毎晩続けて見ることもあれば
ひと月以上見ないこともあった。

でも何年も見続けてきたこの景色や雰囲気は

帰ってきたって思えるくらい、私の拠り所になっている気がした。

だって今もほら、私ほっとしてる。

会ったこともないのに、目が覚めれば顔も思い出せないのに

毎度夢に現れるこの人たちに会えるのを嬉しく感じるのはなぜだろう。

彼らが居るだけで、楽しく感じるのはなぜだろう。

彼女達の気持ちが、自分の感情のように流れ込んで来るこの感覚は
一体なんなんだろう。



よく分からないけれど
この夢が他の夢とは違うって事は、なんとなくずっと感じてた。




夢の中でその人は
沢山の人と、出会いと別れを繰り返した。

大切な人と、一度別れたよね。

あの時私は、辛くて悲しくて、寂しくて怖くて泣いたんだ。

そうすると決めたのは私なのに
彼の居ない世界は、まるで別世界のように空虚なもので

辛い気持ちしか生まれてこないこの意識が
消えてなくなれば良いって毎日思ってた。




でもあなたは、迎えに来てくれたよね。




ん？




私？




幼い頃から見続けた夢はいつの間にか
自分を投影して見てしまう程にまでなっていたらしい。



彼女達の、彼を思う気持ちの強さが
いつの間にか移ってしまったみたいだ。

まるで自分の記憶みたいに思い出せる。

あの日私を迎えに来てくれた彼の姿を。





変なの。
私のお気に入りの、あのシーン。

なんだか今日は
駆け寄ってくる彼の姿はいつもより鮮明で

夢だって事を一瞬忘れてしまうくらいだった。





思い出してくれてありがとう。

いつも支えてくれてありがとう。

私が幸せな時は
いつも隣にあなたが居たね。

そんな顔しないで？





先に眠ってるね。