Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第9章 ペンギン
「あれ?もう良いの?」
「うん!帰ろう」
少年達からブーイングの嵐だ。
漕いでいるブランコの最高到達点でジャンプする少年達を、軽々受け止めてやっているペンギンは
もはや少年達のヒーロー。
すまん少年達。
キミ達の邪魔がしたいとかじゃないんだけど
早くここから立ち去りたい。
素直に応じてくれたペンギンと並んで、家への道を歩いた。
後ろは、振り返らなかった。
「で?ちゃんと話せたの」
「話せた…?でももう大丈夫だと思う」
正直微妙だ。
結局院長は私が本当に聞きたかったことを、教えてくれなかったから。
でも言えた。
院長の拘りに付き合えないことも。
「そ。なら良かったな!」
自分のことみたいにそれを喜んでくれる
この人のことが好きだってことも。
「ありがとね。本当に色々お世話になっちゃって」
「別に?貸し作れたから俺はそれで良かったけど」
貸し、ね。
挑発するような顔でこっちを覗きこんでくるこの人に
言わなきゃいけないことがある。
これは借りを返すうちに、入るのかな。
「あの、ペンギン!お話があります」
「お、告白?」
ぶち壊しか。
物凄い決意を胸にそれを伝えようと思っていたのに
あっさり先に口に出されたせいで全身の力が抜けた。
「なに?分かっててもちゃんとナツの口から聞きたい」
「分かってるなら良いじゃん。もー……」
頬杖をついてニヤニヤ笑ってるペンギンは、絶対に気付いてるこの気持ちを
受け取ったことにはしてくれないらしい。
「じゃあもっかい言っとく。俺は好きだから、告白はナツからして」
だから!
俺は好きってとこは告白に入らんのか!!
照れる気持ちを隠すように、ペンギンを睨み付けた。
全く効果がないどころか
そんな私を、ペンギンは勝ち誇ったような顔で見下ろしてる。
「私も、……ペンギンのことが、好きです!」
言い終えて
恥ずかしさのあまりテーブルに突っ伏して顔を隠した。
「やっと言ってくれた」
耳元に聞こえた声と、急に感じた浮遊感。
横抱きに抱えあげられた私は
近すぎる距離にあるペンギンの顔を直視できなかった。