Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第9章 ペンギン
「私はちゃんと聞きたいし知りたいです。でもきっと、あなたはそうしてくれないから。」
苛立ったように眉を寄せる院長は、今にも掴みかかって来そうだ。
でも大丈夫。
ペンギンが居る。
ちゃんとこっちの状態を把握しているのかが怪しいほど、少年達と騒ぎながらほぼ180度の角度でブランコを立ち漕ぎしてるあの人は
絶対に助けに来てくれる。
「私はペンギンのことが好きです」
院長の眼光が鋭さを増した。
視線で人を殺せるって、きっとこういうことだ。
背中に冷たい何かが伝っていくような気がするし
最強に強そうな名前を付けて貰った大王も、不安そうに鼻を鳴らしながら私の脚に擦り寄っている。
「私が院長にしてあげられることは何もありません。短い間でしたが、お世話になりました」
頭を下げたのは、あの視線が怖かったのもある。
Trafalgar医院では散々な目にあった覚えしかないけど、今思えばそれも楽しかった。
社会の厳しさや女同士のいざこざ、そういう事も学べたし
ペンギンに出会えた。
その場所を作ってくれたのも、そこを守っているのも
全く理解できないトラブルメーカーだけど、この人だ。
一息ついて、顔をあげて
気まずくなる前に立ち去ろうと腰を上げた。
「じゃ、失礼します」
軽く会釈して、ブランコで少年達と遊んでいるペンギンの方へ駆け出した。
「おい待て」
「……なんでしょう」
呼び止められてしまった現実を恨みながら、ギギギと音が鳴る程ぎこちなく後ろを振り返る。
「おまえは結局、いつも俺を置いていくんだな」
なんの事を言っているのか分からない。
置いてけぼりを食らった子供みたいな院長に、良心が痛む気がしなくもない。
でももう、決めた。
「なんの事言ってるか分からない人のそばになんていられません。頭良いのかなんだか知らないけど、その癖、直した方が良いですよ!」
びしっと人差し指を突き立てて、あの院長に説教を食らわしてやった。
今度こそ、“私”を待っていてくれる人の元に駆け出す。
人の気なんて知らずに、子供達と一緒になってはしゃいでいる
あの人のところへ。