Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第9章 ペンギン
何の変哲もない平日の夕方。
掃除も洗濯も終わってるし、夕飯の準備もばっちり。
ペンギンが帰ってくるのを待ちながら、録画していたバラエティーを見ていた。
相変わらずクロちゃんのTwitter詐欺の面白さは神がかってる。
面白すぎて泣ける。
ケタケタ笑いながら膝の上で眠る大王の頭を撫でていると、ケータイにペンギンからの着信があった。
『ナツ今から外出れる?』
「出れるけど、どしたの?」
『院長捕まえた』
「は?」
『聞きてぇことあんだろ?さっさと聞いて蹴りつけようぜ』
「……どこ行けば良い?」
急いで準備をして、大王の首輪にリードを繋いだ。
指定されたのは、いつか財布もケータイもない状態で途方に暮れていたあの公園。
ペンギンが、そんな私を見つけてくれた場所。
いつもより早い時間のお散歩で
散歩の時はいつも居るご主人様がいないこの状況を不思議に思っているのか
大王はぴょんぴょん跳び跳ねながらもキョロキョロとペンギンの姿を探してる。
ちゃんと聞こう。
答えてくれても、答えてくれなくても
はっきり言おう。
私は院長の操り人形にはなれない。
仕事も辞めた。
もう院長は、上司でも経営者でもなんでもない。
もう放っておいてくれるなら
今までの強姦軟禁不法侵入窃盗プライバシーの侵害その他もろもろは
水に流そう。
今さらだけど本当にすげぇなあの人。
あんな傍若無人に生きてきて、よく今まで捕まらなかったものだと感心してしまう。
決別しようとしてる今も、なぜか後ろ髪を引かれるような
変な引っ掛かりを感じる。
本当にあの人を放っておいて良いの?
頭の中で、自分のものなのかも分からない声が聞こえる気がする。
「わん!」
考え事で歩くスピードが遅くなった私を急かすように、大王が早くしろと吠えた。
気のせいかもしれない引っ掛かりを気にして
またあの波乱万丈生活に逆戻りなんて、絶対したくない。
リードを引っ張る大王に引かれるように、目的の公園を目指した。
夕焼けに紅く染まる街並みを、一歩一歩踏みしめながら歩いた。