Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第9章 ペンギン
「ナツ好きなの?シードル」
「え?新発売だったから買ってみちゃったんだけど」
「……ふーん」
先にお風呂に入らせて貰って、リビングに戻るとペンギンが急にそんなことを言い出した。
「シードルってりんごのお酒だったっけ。ペンギン好きなの?」
「……これじゃねぇ」
拘り派か。
相当好きなのか。
なんかたまに、ペンギンが変な時がある。
なんなんだろうか。
「ねぇ、聞いても良いですか」
「なんですか」
プシュッとビールのプルタブを押し開けながらこっちを向いたペンギンは、やっぱりなんだか様子がおかしいような気がする。
「たまにそうなるのはなんでなの?」
「そうなるっては?」
え、自覚ないんだろうかこの人は。
いやあるだろ絶対。
声のトーンも口数の量も絶対いつもと違う。
「りんご」
気になったワードを口にしてみる。
前の時も今回も、共通する話題はりんご。
意味分からんが、りんご。
どうなんだと探るようにペンギンの動向を観察していると、盛大なため息が聞こえて来た。
なんなんだ本当に。
「昔、ずーっと前好きだった女がりんご凄ぇ好きだった」
こっちを見ることもなく呟かれたその言葉は、なんだか胸に重くのしかかった。
「ナツがりんごりんご言うから、それ思い出した」
「そんなには言ってないよ」
なんか、ペンギンって
「……今も好き?」
まだその人のこと、忘れられてないんじゃないだろうか。
聞きたくないような気がしたけど、聞かなきゃいけない気がした。
「ナツは俺にどう答えて欲しい?」
なんでこの人は、そんなことを聞くんだろうか。
だってペンギンのこの感じは、絶対まだ好きだろ。
「“ナツが”俺にどう思ってて欲しいのか聞きたい」
「……私のこと好きって言ってたのに、嘘つきって思った」
我ながら自己中で自意識過剰で勝手なことを言うもんだ。
そんな私を、ペンギンは仕方ねぇなって顔で眺めてた。
今目の前に居るのは
いつも通りの、ペンギンだった。