Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第8章 ロー
ローはナツに応急処置を施し、彼女を抱え上げ立ち上がった。
弾が心臓を貫いていなかったとしても、その付近には比較的太い動脈や静脈が混在している。
患部を圧迫し、血液の流出は抑えたものの
痛いと力なく呟き意識を失った彼女の顔色は青白い。
コラソンの案内で建物の出口へと辿り着いた3人は
ローの車に乗り込むと、Trafalgar医院へ向けて猛スピードで車を走らせる。
苛立ちを隠そうともせずにアクセルを踏むローの後ろで、コラソンは圧迫している胸元を更に押さえ付け血液の流出を防いでいた。
元々コラソンは外科医ではなく整形外科医なのだが、まったく知識がないわけではない。
血液の流出が一定量を越えれば、全身が失血性のショック状態に陥る。
微かに脈打っているその心臓を止めまいと、コラソンは必死に処置を行っていた。
医院へ着くと、ローは手術室へナツを運んだ。
自身もオペの準備を整えつつ、他の外科医を呼んでコラソンの治療を命じる。
可能であればコラソンの治療も自分が行いたい、しかしナツは一刻を争う状態だ。
申し訳なさそうに義父を見つめるローに、んなこと気にしてる場合かとコラソンは笑った。
手術室へと消えて行く息子の姿を、少し心配そうな顔で見送る。
ローは彼女のことを、“ナツ”と呼んでいた。
幼い頃から不思議な夢を見ると話していたロー。
それが前世の記憶かもしれないと言い出した時には流石に驚いた。
あのファンタジーになど見向きもしない、可愛げのない子供であるローが、そんな世迷い言を言い出すとは。
しかしその夢には義父である自分やドフィ、友人であるペンギンやベポも出てくるらしく
具体的なその夢の話が前世だと言うのも、あながちローの思い込みではないような気になっていた。
むしろ誰よりも現実的な思考の持ち主であるローが前世だと言うのならば、そうなのだろうと思わなくもない。
そんな彼の夢の中で、よく登場する割に周りに見当たらない人物。
生涯に渡って前世のローが愛し続けたらしいその彼女に、ずっと会ってみたいと思っていた。