Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第8章 ロー
「…救えなかった命も、ねぇ訳じゃねぇ。」
ナツが特製オムライスに夢中になっていると、ふとローが呟くように言葉を発した。
その声色が悲しみを帯びているような気がして、思わずナツはローに視線を送る。
ローの表情は相変わらず読めないものであったが
その瞳が僅かに、悲しげに揺れているような気がした。
99.8%。
十分に高い数値だろう。
でも、100%じゃない。
辿り着いた可能性に、ナツが手に持っていたスプーンが止まる。
「…上手く言えないですけど」
ナツは少し迷ったが、今心に浮かんだこの気持ちを、今の彼に伝えなければいけない気がした。
ほとんど無意識に、口を開いていた。
「救えなかった人たちも、院長のこと少しも恨んでなんてないと思います。院長が誰よりも信頼できるから、院長を頼って来たんです」
生存率を聞かされて、それが下がれば下がる程、患者さん達はきっと怖い。
50%の確率で当たるくじは当たる気で引けても
自分の命の生存率が50%と聞かされて、同じように生き残る気で手術に挑めるだろうか。
きっと無理だ。
成功率が70%でも80%でも、例え90%だったとしても
当事者からすれば、残りの数%の可能性が怖くて仕方ない筈。
自分の命を預けるなら院長だって、訪れる患者さん達は皆そう思ってTrafalgar医院を訪れる。
「大切な人だったなら、尚更……誰よりも院長が信用できるって、知っていたと思いますよ」
彼に大切な人がいたことも、救えない命が誰のことを指してるのかも、直接聞いたわけじゃないので分からない。
だけどなぜか、口から出た言葉には確信が持てた。
なんの根拠もないけど、絶対そうだって言い切れる。
そんなナツの言葉を、口も挟まずに聞いていたローの瞳は
悲しみを帯びたものから一変し、驚きで見開かれていた。
ーーー彼が信用できるのを、私はよく知っています。
ローの中で、懐かしい声が聞こえた。
あぁ、本当にこいつは……
ローはナツから視線を逸らすと、酒に口を付けた。
普段より目元に力が込められていないようにも見えるその表情は
何かを、考えているようだった。