Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第8章 ロー
大幅にイメチェンされたナツがローにエスコートされるまま辿り着いたのは、城。
いや、城っぽくも見える、見るからに敷居の高そうなレストラン。
あぁ、うん。
確かにこんな場所、あんな格好では来れない。
ナツは軽く顔を引きつらせながらローの後に続き店の中へと入った。
案内されたのは個室。
その窓からは綺麗な夜景が一面に広がって見えた。
ローのマンションとはまた違った、目線と同じ高さに広がる夜景。
それはとても、綺麗だった。
ソワソワと落ち着かない様子のナツは促されるように適当にお酒を頼むと、店の人は軽く会釈をし部屋から出ていった。
「どんだけ緊張してんだ。普通にしてろ」
ナツが石のように固まっているのを、ローは苦笑いしながら見ていた。
そう言われても、いきなりこんな場所に連れてこられて堂々としていられるほど、ナツは裕福でもなんでもない。
しかも目の前には世間を騒がすイケメンがいる。
どうして落ち着いてられようか。
「手術、どうだった」
運ばれてきた酒で乾杯すると、そんなナツを気遣ってか、珍しく彼から話題を提供してくれた。
「…凄かったです。本当に」
ナツはどう答えようか迷ったものの、結局そんな言葉しか出てこなかった。
彼のオペの様子は、最早凄いの一言で片づけられないほど、鮮やかなものだった。
99.8%の成功率は伊達じゃないんだろう。
「失礼します」
そして、そんな話をしていると運ばれてきた沢山の料理。
ナツはその中に、オムライスとハヤシライスがあった事に少し驚いた。
彼はナツがあの店で、何時も食べていたそれを覚えていたのだろう。
こんな城のような敷居の高いレストランで、オムライスやハヤシライスが通常メニューにあるとはとてもじゃないが思えない。
恐らく、院長が特別に頼んで作らせたんだろう。
そんな彼の気遣いが、ほんの少し心に染みた。
「院長が救えない命って、きっとないんでしょうね」
料理に舌鼓をうちつつ、ナツはぽそりとつぶやく。
医療の専門的な事は分からない。
ただ今日、止まっていた心臓が彼の手の中で動き始める所を目の当たりにして
ふと、そんな事を思った。