Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第8章 ロー
店員のお姉さんが持ってきた全てのパターンの試着を終えると、彼女はナツの意見を聞くこともなく
2番目のにしましょうかと微笑んだ。
もう私に意見を求める事はやめたらしい。
お任せでっては言ったけど。
白地に大きめの赤い花がいくつもプリントされたシルク素材のワンピース。
やや膝上丈のそれは複雑な切り返しがいくつも入っており、女性らしいシルエットを保ちつつも
ふんわりとした印象がとても可愛らしかった。
それに合わせるように
肌触りの良い黒のボレロに同じ色のパンプス、ネックレスやバッグ等が次々に揃えられていく。
ほぼ着せ替え人形と化したナツはハッと我に返ると、店員が離れた隙に外された値札を裏返した。
“¥94,800-”
マジか
しかもこれ、まだ安そうなボレロの方の値札。
ナツは1ヶ月分の給料を身に纏っているかもしれない恐怖に背筋を凍らせると、店員に連れられて試着室へとやってきたローとばっちり目が合った。
「ああ、良いな。ついでに髪と化粧も頼む」
「かしこまりました」
ドレスアップしたナツを頭のてっぺんから爪先まで眺めたローは、満足気に頷き去っていく。
呼び止めようと声を上げたが、絶対に聞こえていた筈の彼がこちらを振り返ることはなかった。
おいおいおい。
ナツが途方に暮れているのも束の間、
試着室の大きな鏡の前に座らせられ、拭き取りタイプのメイク落としでそれまで顔面を覆っていた化粧を取り去られる。
いつの間にか二人に増えていたお姉さんが、手慣れた手つきでナツの髪を巻いていた。
「院長先生の恋人ですか?羨ましい!」
「これからどちらへ行かれるんですか??」
キャピキャピとした声で、質問の嵐が舞い込んでくる。
心底羨ましそうな顔を浮かべながらも、彼女達が手を休める事はなかった。
普段使っているものとは違う、化粧品から漂う高そうな香りに
ナツは少しむせそうになった。
20分程でメイクもヘアセットも完成し、ローの元へと送り出されたナツ。
慣れない格好に居心地の悪さを感じていると
ローがナツの頭にそっと、唇を落とした。
一瞬何をされたのか分からなかったナツが、それを理解する頃には
二人を乗せた車はもう、走り出した後だった。