Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第8章 ロー
ミーティングが終って数分後。
出席者達は各々が現場へと戻ってしまい、その場に取り残されたのはナツとローの二人だけになった。
「ちょっとどういうことですか。聞いてないんですけど」
「言ってねぇからな」
ローがもし、生卵なら。
きっとナツはそれを握りつぶしていただろう。
ローがもし、カステラなら。
どこかの芸人がノーカロリーだと言い張る程に
ぐしゃりとそれをぺったんこにしていただろう。
ローがもし、……
とにかくナツは顔を青ざめさせたまま、わなわなと震えながらローを見上げていた。
そんな彼女の様子にすら口元を吊り上げる彼は、中々にイイ性格をしているだろう。
看護師長のエミリアは正看護師に降ろされるようで、今この医院の正看護師は3人となったらしい。
いやそんなことはどうでもいい。
それよりも。
いくらあんなに鬱陶しくても、いい加減父が心配だ。
「心配事か?それならたった今消してやっただろ。もう誰もお前に手は出せねぇよ」
おまえの家族も心配ねぇ。
ナツの心情を悟ってか、ローが付け加えるように吐き捨てたその一言。
その言葉を信じていいものかは怪しいところだ。
でも今は、取り合えず信じるしかない。
今のナツは
世界に影響力のある大病院の院長こと、ローの一番のお気に入りポジションにいるということになる。
背後にドンキホーテファミリーもいる中、そんな彼女に手を出そうとする命知らずはいないだろう。
「いつまで突っ立ってんだ。早く行くぞ」
会議室を出ようとしていたらしいローが、いつまでも呆けた顔で立ち尽くしているナツに向き直り声を上げた。
本日のオペ:人工心臓弁移植術
手術室:102
執刀医:院長
ナツは連れて来られた場所に置かれたボードを見て、顔を引きつらせた。
本気で私みたいな素人を立ち会わせる気か。
しかも心臓って、……あの?
止まると死ぬやつ?
ナツは遠退きかけた意識を必死で手繰り寄せ、全身全霊をかけて拒否を示した。
何も出来る気もしなければ正直内臓など見たくない。
しかしそんな彼女の抵抗も虚しく。
その日の手術室前では
引きずられるように手術室へ連行される一人の女性の姿が、多くの人に目撃されていた。