Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第8章 ロー
「…っは!?何で鍵かけてたのに中に入ってきてるの!?てかなぜここにいる!?」
ナツは目の前で睨んでくるローにジト目で応戦しつつ、突っ込みたかったことを突っ込んだ。
仮にも女性相手に不法侵入もいいところだ。
「ここの管理者はおれだ。スペアくらい持ってるに決まってんだろ」
「……なんてことだ。まさかプライベートもプライバシーも私には与えられないのか」
ナツは頭を抱えた。
さも当然のように言ってくる彼は、人権という言葉をご存知ないらしい。
それとも恋人同士なら、そういう壁は取り払おうぜと言うスタンスなのだろうか。
どちらにしても。
さっそく人の意見を全スルーする気満々そうな彼の気配に、ナツのため息は止まらない。
ここに来た理由の方は、出勤が遅い私を(逃げたのかと思って)心配しての事らしい。
優しいところもあるものだと、邪険に扱った事を少しだけ反省した。
なんとなく、理由を話す彼の言葉に含みがあった気がするのは気のせいだろう。
心配してくれるのはありがたいが、生憎私は朝は弱いんだ。
そこは察してくれ。
「昨日来る予定だったがオペが無駄に長引いた。さっさとくたばればいいものを」
「いやいやいや。あなたがいうと冗談に聞こえないのでやめてください。というか人の命を何だと思ってやがる」
ナツは呆れた表情で靴を履いていた。
ナツは知らない。
昨日のオペの生存率が10%を切る大掛かりかつ、複雑な施術であった事を。
そんなオペを率先して行いたがる医師はまず居ない。
患者も家族も、術前のインフォームドコンセントによりリスクを理解した上で手術の同意書にサインする。
しかし、実際に失敗すれば理不尽に責め立ててくる事はザラだ。
この世界ではよくある光景。
ローとしては、そんなことに特に関心はなかったのだが医者としてのプライドはある。
成功の確率が1%でもあるオペを、自分が失敗することなど己のプライドが許さない。
その結果、散々な言い様をされた昨日の患者は、無事に今も快復へと向かい病室で療養している。
そんな彼の腕だからこそ、世界中からその奇跡を求め、患者達はTrafalgar医院へと足を運んでくるのだ。