Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第8章 ロー
なんとか生活空間を整え終えた翌朝。
ナツは朝から慌ただしく昨日渡された制服に袖を通し、出勤の準備をしていた。
ナース服ではない制服はナツに少しの安心を与えたものの、手術に立ち会えと言われた一昨日の出来事を思い出す。
何をすればいいのか検討も付かないナツは、げんなりとした顔で久しぶりである化粧を済ませると
いい加減出勤しないとヤバそうだと玄関へ急いだ。
普段遅刻スレスレを攻めていたナツは、この部屋から指定された出勤場所に辿り着くまで、
今まで以上の時間を要することに起きてから気づいた。
あの通路を使ってショートカットすればすぐ着くのだがなんとなく、あまり使いたくはない。
ナツはカバンを手に取ると、寝室からリビングへ足を踏み入れた。
「…おせぇ」
ナツがリビングへ入った瞬間、ソファーに座っている院長の幻覚が見えた。
なんだこれは。
この社宅は修羅場の多発が原因で、生霊とかがソファーで寛ぐのが日常茶飯事なんだろうか。
いや生き霊になるなら女の方だろう。
なぜ院長の生き霊が……。
ちょっとやってみたかったんだろうか。
ナツは院長にもお茶目な一面があるもんだと、失礼極まりない思考を働かせながら
玄関へと向かおうとした。
「相変わらずシカトとは良い度胸だな。いい加減にしろ」
だがそれも、設定上生霊である筈の実体を伴うご本人に腕を掴まれたことにより阻止される。
あれ。
生き霊の方じゃないのか?これ。
ナツは認めたくない現実のせいで、状況の把握に多大な時間を要した。
生き霊など、ちょっとなりたいと思ったくらいでなれる筈がないだろう。