Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第8章 ロー
世間を騒がすイケメン院長と恋人同士になるという恐ろしい珍事件を経て、1日が経った。
翌朝、ローに社宅へと送り届けられたナツは、朝から片時も休まず荷物の整理に励む。
出掛けにしれっと今日は休みだと大嘘をぶっこいた院長を、無理矢理出勤させるのには随分骨が折れた。
今日は確か前々から大掛かりなオペの予約が入っていた筈だ。
そんな日に最も腕利きである院長が休みである筈がないだろう。
問い詰めると、バツの悪そうな顔を浮かべながらも院長はあっさり嘘を自白した。
施術できる医師は他にもいるらしいが、どうせ院長指名での予約だろう。
頼むからこれ以上私の気苦労を増やしてくれるなと、ナツは頭を抱えながらも、思い足取りで病院へ向かう彼の後ろ姿を見送った。
とりあえず出勤は明日からということで院長も渋々ではあるが納得済みだ。
本来引っ越しをするのであれば、数日は猶予が欲しいところではある。
しかしそんな事を言っていると仕事にも支障をきたすだろう。
どこかのヤンデレが。
ナツはため息を吐くと、時間もあまりない為急いで部屋の整理を進めた。
与えられた部屋は社宅とは思えないほど、広くて豪華だ。
最上階に位置するこの部屋は、隣の医院とほぼ同じ高さ。
そして最上階同士を繋ぐように架けられた通路。
その通路へ続く扉は、普段は固く閉ざされている。
扉の鍵を持っているのは、ごく少数だ。
ナツは机の上に置かれた鍵を見て、ため息を吐いた。
恐らくあの通路の先にあるのは院長室だ。
使うつもりはなかったものの、そう言えば昨日から院長と私は恋人同士。
恋人同士ってなんだ?何をすればいい?
いや、世の中のカップルが何をしているかは分かる。
重要なのは相手があの院長だという事だ。
どんな日々が待っているのか、まるで見当もつかない。
取り合えず振り回される毎日は予想できる。
嫌な予想だ。でも当たりそー。
「やばっ、急がないと!!」
ナツは日が暮れ始めた街並みを窓の外に捉えると、うっかり止まっていた手を動かし荷物の整理を再開した。
今考えても仕方ない。
取り合えず、なるようなるか。
夕焼けの差し込むマンションの一室で、ナツは休む事なく荷物を片付け続けた。