Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第8章 ロー
ナツは一瞬身体をビクつかせると、後ろを振り返った。
「……」
そこには、少し驚いた表情で立っているローの姿。
近くに落ちている紙袋は、彼が落としたものらしい。
床の上に散らばっている幾つかの食材達。
もしかして今日は、彼が何かを作ってくれるつもりなのだろうか。
ナツは首を傾げた。
ローはそんなナツを見つめたまま暫く動かなかったが、ふと我に返ったのか彼女の座るソファーへと近づいてきた。
「……ナツ」
そして彼女の隣に腰を掛けると、そっとその頬に触れた。
昨日のような狂気の感じられない、彼の瞳に映る自分の姿。
ナツは突然の優しさ溢れる彼の行動に少し困惑し、反応に困っていた。
伝わってくる思い。
それは愛情だ。
いくら彼のこれまでの暴挙が度を越えているとは言え、やはり昨日感じた思いは勘違いではなかったらしい。
ナツはその視線に耐えきれず、そっと目線を下に落とした。
「……思い出したのか?」
そんなナツの顎に手を添えると、再び目線を合わせてくるロー。
そんな彼に、ナツは頬が熱くなるような気がした。
「…え、えーっと、思い出すって?」
しかし彼の言ってる意味は分からない。
彼が自分を見つめるこの眼差しに込められた物が、愛情だというは痛い程分かる。
ただずっと気になっている事。
これは本当に”私”へ向けられたものなのか?
ローの不安を擽る言葉は、少しだけ私の心に暗い影を落とした。
そしてそんなことを考えている自分自身に少し、驚いた。
これじゃまるで……私が本当に院長のことを……
先ほど考え付いた自分でも理解不能な可能性が、少しずつ確信を帯びてきているこの状況。
ナツは思わず視線を逸らした。
「……まだ、分かんねぇのか」
そしてローもまた、彼女の様子に表情を歪める。
その瞳には、再び暗い狂気が宿り始めていた。