Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第8章 ロー
意識を失った彼女を見て、ローは漸く我に返った。
目の前で力なく横たわる彼女の様子に、頭を抱えため息を吐く。
彼女の中から己のものを引き抜くと、白濁の液体が彼女の足を伝い流れ落ちた。
汚れたラグは明日捨てるかと、頭の片隅でぼんやり考えながら、彼女を抱き抱え足を進める。
向かう先は寝室。
未だかつて、ここに自分以外の人間が足を踏み入れた事はない。
ベットに彼女を横たえると、その淵に腰を下ろした。
死んだように眠る彼女。
まだ彼女と面識を持ってから、そう長い時間は経っていない。
それなのにその顔はどこか懐かしさを感じさせ
それにつられるように、ローは遥か昔の記憶を辿っていった。
海賊として生きていた頃、愛している女がいた。
幼い頃から見る夢は、一人の女と出会ったことで
ただの夢ではなく、それが異世界の自分である事を己に知らしめた。
神だの生まれ変わりだの
そんな世迷い言を鵜呑みにする訳ではない。
でもあれは自分で、海賊であった自分が愛した女はこの女だ。
海を背景に笑う白髪の彼女も、俺を愛し、二人で過ごしたあの時間はこれ以上にない幸せな時間だった。
彼女さえいればそれでいい。
本気でそう思うほど、俺は
彼女に溺れていた。
けどおまえは……
「おまえは何度、おれから逃げれば気が済むんだ?」
眠るナツを見つめる瞳には散々熱を吐き出して尚、暗い狂気が宿っていた。
彼女は愛する者を守るため、何度かその命を捨てようとした。
その度に、彼女を愛した俺はそれを救おうと必死になった。
実力に伴わない偶然、奇跡がこの世に存在するならばあれ意外にその名がふさわしい出来事はないだろう。
奇跡に救われた。
生き延びられた。
だからと言ってそれで良かったと落ち着けるほど、自分が穏やかな性格をしている訳ではないのは
今も過去も変わらない。
長く寄り添いながらも、そんな俺の性格を理解しないアイツは平気で自分の命を投げだそうとする。
「いい加減に気付け。俺が失いたくねぇモンの優先順位くらい」
眠るナツを見つめるローは神妙な顔付きで、割れ物を触るようにそっと
その髪を撫でた。