Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第8章 ロー
「落ち着けって。俺ナツに何もしてないし」
ペンギンは鍵を差し込み、ホールヘ続く扉を解錠する。
取り合えずナツの為に弁解はしてみたペンギンではあったが、その効果の程は怪しい所だ。
実際にそれを聞いたローは目を細め怪訝な表情を浮かべている。
こいつは本当に人を煽るのが得意らしいな。
ここまで人の言葉一つに左右されている自分自身に、ローは内心苛立ちを覚えていた。
ナツが関わっているからこそ、こうもムキになっている自覚がある。
だがそれに拍車をかけているのは、間違いなくこいつだ。
ローは舌打ちすると、冷えた表情でペンギンを睨みつけた。
ホールへ続く扉が開ききると、不敵な笑みを浮かべたペンギンが中へと入って行く。
「取られたくないなら、大事にしなよ」
頑張ってねとしれっと言い残し、背を向け立ち去っていくペンギン。
ナツはちょっと待てと彼に手を伸ばした。
爆弾を投下するだけしておいて自分は現場から立ち去るとか何事だよ。
淫乱女疑惑を残して行きやがって。
冗談だと言ってみたり、軽くフォローは入れて行ったものの、院長の怒りがそれで鎮まった様子はない。
お前の仕事はまだここに残っている!
そんなナツの心境など露知らず、彼は足を止めることなくその場を去って行く。
ナツの伸ばした手は、虚しくも宙を舞った。
そして宙を舞ったその手を、ローは手加減なしに掴み上げた。
握られた手の痛みにナツは表情を歪ませるが、それよりも彼から漂ってくる狂気に近いオーラのほうが何倍も怖い。
一体彼はなぜそこまで怒っているのか。
数時間前に、彼がナツにしようとしていたことを思い出す。
院長が見ているのは、私を通した“他の誰か”じゃなかったのか?
私の気持ちなんてどうでも良いと言ってたじゃないか。
ペンギンの事は誤解だが、何をこんなに殺気だってるんだ。
頭上から感じる痛いほどの視線。
だがしかしとてもじゃないがそれに向き合う勇気は起きそうもない。
肩をすくめ視線を落とすナツの様子に舌打ちを漏らしたローは
半ば引きずるように、彼女をその場から連れて行ったのだった。