Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第6章 迷い
暫く二人の無言の睨み合いは続いた。
「ここにてめぇが無断で入る許可を出した覚えはねぇぞ」
ローは手錠をベットに放り投げると
ナツを背に庇うように立ち、ポケットに手を突っ込んだ。
「ここ最近のおまえの行動は異常だ。心配してここまで来てやったんだろ」
シュライヤとローの付き合いも長い。
最近のローの様子がおかしい事くらい、注意深く見ていなくとも簡単に分かる。
それに加えて先ほど聞こえてきた会話。
流石に黙って見過ごすことはできなかった。
シュライヤはポケットに突っ込まれた彼の手に視線を送り、眉をひそめた。
「おまえ自分が何やってるのか分かってんのか?お前のその言葉が、行動が、彼女を傷つけている事に何故気付かない」
「お前に関係ねぇだろ。これは俺とナツの問題だ」
さっさと失せろ。
ローの鋭い視線はそれを物語っている。
綺麗事の説教など、彼に聞く気などなかった。
「二人の問題なら彼女の意思をもっと尊重しろ。従わない相手を力でねじ伏せて、何が二人の問題だ?ただのお前の独り善がり……」
「うるせぇ…おまえに何が分かる!?」
ローの叫びと共に、シュライヤの頬に赤い筋が伝った。
ポケットに突っ込まれていた手から放たれたメス。
鈍い音と共に、それは扉に刺さっていた。
「あっぶねぇな」
シュライヤは一瞬息を飲んだものの、頭をガシガシと掻いてため息を吐いた。
こんなに取り乱した彼は見たことがない。
本当に何が、彼をここまでさせるのだろう。
自分がここに居てもかえって彼を逆上させる気もする。ここは引くべきか……
シュライヤはローの背中の影に隠れるように俯いているナツの表情を見て、やはりそれではいけないと思いとどまる。
このままナツを、ここに置いては行けない。
「なぁ。お前ナツのことが好きなんだろ?誰かの代わりを彼女にさせようとしてるんじゃねぇよな?ナツ自身を見てんだよな?」
「しつけぇよ。お前が出ていけば俺はこいつと……」
「彼女の顔見てから言えよ」
シュライヤの言葉に押し黙ってしまったロー。
静まり返った室内に静かに響く、誰かがすすり泣く声。
ローはその声の出所を思い目を見開くと、ゆっくりと後ろを振り返った。