Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第6章 迷い
「……っ」
ナツは泣いていた。
流れ落ちる涙を止めようと必死に瞳をこすっているが、それは一向に止まる気配を見せない。
看護師達からどんな仕打ちを受けても泣かなかったナツ。
情事の時に見せる涙とはまた違う涙。
声を押し殺して肩を震わせるナツの姿は、ローの心に動揺が走らせた。
「もう少し彼女のこと、考えてやれ」
シュライヤはベットに近づくと、ナツの手を引き立たせた。
「あー。俺が言うのも何だけど、こいつも悪い奴じゃないんだ。取り合えず一旦ここから離れろ。荷物の件は後でどうにかするから。」
「おい、おれの話はまだ終わって…」
「あんたの話し相手は俺がやってやるよ。言いたいこともあるし」
シュライヤはローの肩を掴むと、ナツの背を押して扉の方へ向かわせた。
扉を開けた時
チラリと室内に目を向けたナツの視線が一瞬、ローのそれと重なった。
彼の瞳が必死に、行くなとナツに訴えかけている。
その思いは痛い程、ナツにしっかり伝わっていた。
ごめんなさい。
取り合えず一回気持ちの整理をさせてほしい。
ナツは彼の視線を振り切ると、扉の外へ駆け出した。
背後から聞こえる、シュライヤとローが言い争う声。
今度、シュライヤにお礼を言わないと。
ナツは取り合えず実家に帰ることにして、医院を出た。
ナツはぼんやりと、ローのことを思い出していた。
彼はいつも自分勝手で、強引で、何を考えてるのか分からない。
でも偶に彼の瞳に見える、愛しさのような優しい気持ちの片鱗。
そしてどんな事情であれ、私を求め必要とするあの執着心。
例えその事情が、過去の大切な人を私に重ねて向けられたものだとしても
すがり付くようなあの目が、頭の中から離れない。
私の気持ちなんてどうでも良いいと
ただ彼の思うままにあそこに閉じ込められていれば良いと言う彼の言葉を聞いて、胸が締め付けられた。
少しでも歩み寄ろうとしたのに、それに全く応じる気のない彼を見ているのが
辛かった。
一体彼は何がしたくて、私は彼にどうして欲しいのだろう。
ナツは濡れた頬をこすると、夕日が差し掛かった街並みをとぼとぼと歩いた。