Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第5章 激情
ペンギンの思考は暫しの間その働きを止めていた。
まさかとは思ったものの、声の主を言い当ててしまった己を呪いたい。
確証はないものの、恐らく今院長が抱いているのは……
『分かったなら、今後こいつに近づくな』
ペンギンの沈黙をどうとったのか、ローはそれだけ言うと通話を切ってしまった。
切る寸前に聞こえた、悲鳴に近い彼女の声。
やはりその声は、ペンギンが良く知っている声と酷似していた。
(マジかよ…)
ペンギンは携帯をゆっくり降ろすと、その場に立ち尽くした。
院長がナツを気にかけ始めたのはここ最近だ。
それがたった数日でここまでの事態に発展しているというのはどういう事だろう。
どうせただの気まぐれだと思っていたペンギンは、まさかのライバル登場にげんなりとした表情を浮かべた。
今更引けるような軽い気持ちならば、こうも頭を悩ませたりはしない。
相手が院長だと分が悪いのは確かだが、少なくとも今のナツが院長に好意を寄せているとは思えない。
寧ろまだ俺のほうが好感度は高いと思う。
ペンギンは頭を掻きながら、ため息を吐いた。
始まりは一目惚れだったのだろうか。
一目惚れなど、面食いの自覚がある自分からしても珍しいものでも何でもない。
でも、ナツは他の女と違った。
初めて夜の中庭で出会った時
驚きで目を見開くナツに、何かを感じた。
彼女と接していく内に感じる懐かしさ。
こんな病院で看護師達に追い回されていれば、他人への警戒心も増すだろう。
そんな他者に素っ気ない彼女が時折見せる、子供のような無邪気な反応。
一緒にゲームをした時の、あのはしゃぎっぷり。
そんなたまに見せる普段とは違うナツの一面がもっと見たくて、気づけばナツを探しては目で追っていた。
こんなこと、俺だって初めてだ。
さて、どうするか。
合意にしろ無理矢理にしろ、今ナツはローの手の中。
どうやってこっちに気を引くべきか。
今回こそは譲らねぇ。
今ナツを喘がせているだろうローの手から彼女を奪い去る計画。
それを頭の中で考えていると、自然とそんな思いが浮かんできた。
今回……?
じゃあ前回はいつだよ。
己の意識の外側から浮かんだかのようなその思いに、自嘲が溢れた。