第14章 黒の軍と赤の軍
「いえ、いません。両親は僕が19の時に事故で死んでいますから。」
エドガーだけでなく、その場にいた幹部のほとんどが、その言葉を何ともないようにさらりと言う有栖の様子に軽く目を見開いた。
そんな男達の様子を気にもとめず、有栖はにこやかに続ける。
「でも、僕の友人はなかなか対応力のある女性だから、身に危険が及ぶようなことはないんじゃないかと思いますよ
エルさんは元々科学の国の人間ですし、あっちでの生活にもそれほど困らないでしょうし」
表情を戻した赤のジャックが顎に手を当てて頷く。
「なるほど。
じゃあ、その有栖についての新しい情報を奴らに知られると困る…と」
それが、と言って有栖が口を開いた。
「実は、魔法を弾けないということはもう知られてしまっているんです。すみません。
そのことによって、エルの中身が入れ替わっている、ということ、僕に魔法の国の人間の血が流れていることの2つを把握されていますが、能力持ちであることは知られていないはずです。」
森で話したのは初日のロキとの入れ替わりの話のみで、シリウスと馬上で話した時は既に森を抜けていたことを思い起こしながら淡々と話し続ける。
「彼らの目的が、魔法を弾く力の研究なのだとしたら、狙われる可能性は少なからず低くなっていると考えています。
僕を襲った人の中に魔力持ちはいなかったようですし、僕の魔力を感知できていないと思いますし。
しかし、知られている可能性を考慮すると、詳しい事情を軍の幹部のみなさんにも伝えておくべきだと考え、このように話をする機会を設けさせていただきました。」
有栖は何とか事情を説明し終えられたことに息を吐く。
そうして、話を聞き終えた幹部達はこれからのアモンの残党達の動きが予想できないため、あらゆる可能性を考慮した上での対策や方法など互いの意見を交換し、まとめて、その日の会議を終了したのだった。