第12章 麻里と有栖
とても繊細で、綺麗な人。
父親がイギリス人、母親が日本人。
父親の血を多く受け継いだのか、容姿はどこか日本人離れしていて、周りの目を引く。バイリンガルで英語を話せる上に、穏やかな口調や仕草は紳士のよう。一見、近付き難いようにも感じる雰囲気を纏っているけど、話してみると意外とお茶目でとても可愛らしい。
有栖と関われば関わるほど、彼女の魅力に人として惹かれていたが、出会って1年以上経っても、常に一定の距離を取られていた。
彼女には秘密があった。
人の心を読み、聴かせることのできる能力。
信じられなかったけど、実際に自分の心を読まれて、酷く動揺したし、怖いと思った。でも、彼女の苦しそうな顔を見た時、咄嗟に彼女の手を取って抱き締めていた。
初めて、有栖が私の前で涙を見せた日だった。
それから何日か経ち、また有栖の部屋に行った時、ゆっくりと彼女が話した事実に、私は唖然とした。
幼い頃に怖い思いをしてから能力を隠す努力をしてきた結果が今の自分の振る舞いに繋がっていること。
19歳の誕生日に両親が事故死したこと。
能力のことを知っていた親戚の、有栖の引き受け先を巡った争いが嫌で全ての血筋と縁を切り上京したこと。
一人でバイトをしながら勉強し、大学を卒業、自分の得意分野を生かせる企業に就職したこと。
有栖は、決して涙を見せることはなく、他人事のように淡々と自分の人生を話した。
歩んできた壮絶な人生と背負わされた運命。
有栖の穏やかな笑顔の中には、触れたら壊れてしまいそうな程、繊細な心が隠されていることを知った。
彼女は同情されることは望んでいない。
だから、私は"今まで通り"を選んだのだった。