第10章 有栖と黒のQ
『…どうしてだ?』
「…この魔法の国では、こんなに忌々しい能力を持っていても みんながきちんと僕を認めてくれて、嫌悪せずに扱ってくれる。何だか、そんな気がするんです」
そんな有栖の言葉に、俺は彼女の今までの行動の裏にあった気持ちを悟った。
フェンリルに触れて驚き、そのまま飛び出て行ってしまったことも、ハールの家で泣いたことも、馬との会話を聞かれたと知った時の怖がり方も、全て、自分の能力に対する相手の反応への恐れが招いたものだったのだ。
科学の国では、魔法が発達していない。そこで、能力持ちの彼女がどんな思いをしながら生きてきたのだろうと思うと、胸が締め付けられるような気持ちになった。
『……黒の軍の幹部にだけは能力のことを伝えてみるか?
あいつらはガキみたいにうるさいが、そういうことを気にするような奴らじゃないからな』
「…大丈夫でしょうか」
『ああ、この国には能力持ちが他にもいるから、
きっと受け入れてくれるはずだ』
「…!僕のような人が他にもいるんですか…!?」
元々大きい目をもっと大きくして、有栖は振り向いた。
『お嬢ちゃんのように心を読むというような精神的な能力持ちはいないが、物を浮かせて動かす、だとか、水を操る、といった物理的な能力を持つ者が数人いるんだ』
「…その人達は、この国で普通に暮らしているんですか…?」
『ああ、もちろん』
有栖は目を輝かせていたが、すぐに顔を曇らせた。
「でも…心を読む能力だなんて、目に見えないし、気味が悪いですよね……」
よほど、自分の能力に対する嫌悪感が強いらしい。
そんな有栖に、俺は1つの提案をした。
『…なら、ちょっと遊んでみるか?
すぐにあいつらはお嬢ちゃんが怖がってる奴らとは違うって分かるはずだ』
ここまでして、彼女に能力のことを打ち明けようとさせてしまうのは、"あの時"のエルと姿が重なって見えたからだろう。きっと。