第10章 IH予選
私たちは大岬高校に危なげなく勝って、伊達工に勝った烏野と明日、試合をすることになった。
『徹ー、今日行くわ』
及「じゃあ一緒に帰ろっか」
岩「くれぐれも夜更かしなんかすんじゃねぇぞ」
心配するはじめを軽く躱して…はないけど、何気に上手くあしらった徹と、徹の部屋で烏野のDVDを見る約束をする。
『片方ずつでいいよね?』
及「やばい。俺ら、カップルみたいじゃない?」
ふざけてる徹を無視して、ヘッドホンを片方ずつ耳に当てる。
しばらく見て、
『徹も分かったでしょ?…おやすみー…』
徹の背中に声をかけて、家に帰った。
次の日、烏野との対戦。
及「それじゃあ今日も―…信じてるよ、お前ら」
徹が言う、試合前のいつもの一言。
徹が言うと、一種の冗談の様でもあって、或いは脅迫の様でもあって…でも、こればっかりは何の裏もない言葉だとみんな知っているから、みんなもまた徹を信じてる。
もちろん私だって信じてる。
でも、私が信じてるのは徹だけじゃない。
信じてるよ…みんな。
『徹。初っ端からツーアタックやったれ』
及「なにそれ。ユキちゃんナイスアイデア!」
昨日気づいた変人速攻と普通の速攻の違いを狙うも、合図を変更された。
影山くんがスピードの呪縛にかかって孝支とセッター交代するも、結局第2セットの途中で戻ってきた。
第1セットは青城。第2セットは烏野。
最終セット。
親治くんのジャンプトスから徹のバックアタックも綺麗に決まるし、徹とはじめも相変わらず阿吽だし、日向くんの移動攻撃もディグで対応できてる。
ただ、マッチポイントからが長かった。
体力温存していた英が活躍して青城が優勢のはずなのに、烏野も粘ってブレイクされる。
どっちともが30点を超えて、どっちともの体力と気力が限界になった中、33-31で勝ちをもぎ取った。
セットカウント2-1で青城の勝利だ。
『…ふぅ』
記録を書いていたノートを握りしめていた手を緩めて、ほっと一息ついた。