第10章 IH予選
『続けて泉石高校と準々決勝あるから、水分補給したら着替えておいてね』
「「「はーい」」」
準々決勝は2-0で勝った。
その後の準決勝も危なげなく勝てた。
そして3日目、白鳥沢との決勝戦。
今までの練習とか、経験とか策略とか、全部力だけでへし折っていく。
白鳥沢はそんな感じ。
結局0-2で負けた。
ボトルを洗うために体育館の外の水道までやって来た。
ここなら、ほとんど人は来ないはず。
ボトルを洗うのもそこそこに、私の目からは涙が溢れる。
私が泣く立場じゃないのに…
選手だって泣いてないのに…
『…うっ…く……ひっく…』
耐えきれずにその場でしゃがむと、水道を背に見つからないように体を小さくする。
及「ユキちゃん見ーつけた」
突然聞こえた徹の声に肩が跳ねたけど、
『…見つけないでよ』
顔は膝に埋めたまま、小さな声で抵抗する。
及「ユキちゃんは1人で泣いてると思ってたよ」
『…泣いてないもん』
及「…そっか」
ははは。と笑った徹は私の前に膝をつくと、優しく私を抱きしめた。
及「ユキ。俺たちは諦めない。春高予選でリベンジだ」
ついておいで、ユキ。と、私の肩を掴んで目を合わせる。
そんな真剣な顔しないでよ…
呼び捨てなんて普段しないくせに…
私だって、まだみんなのバレー見ていたいよ…
『…ちゃんと全国、連れてってよね』
及「…!当たり前じゃん」
ニカッと笑った徹は私の涙を指で拭うと、戻ろっか。と私の手を取って歩き出す。
みんなの所に戻ると、もうバスに乗るところだった。
私の横を通る時、はじめが私の頭にポンッと手を乗せる。
一静がポンポンッと同じように手を乗せる。
貴大がクシャっと頭を撫でる。
無言のくせに、頭に触れた手は無性に優しかった。
『…っ…』
また泣きそうになるじゃんか。
及「帰ろう」
徹に手を引かれてバスに乗ると、そのまま青城まで帰る。