第4章 呼び出し
…この声は、たしか…
女「く、国見くん…っ」
女「私たちは…別に…っ」
国「何やってんの?」
国見くんは冷静だけど、声は怒ってる。
リーダー格の女子は、サッとカッターを隠すと、行こ。と言って全員引き連れて校舎の方へ歩いていった。
国「大丈夫ですか?」
『うん、ありがと。でもどうしてここに?』
左手を体の後ろに隠しながら聞くと、
国「購買行った帰りに通りかかって」
国見くんはそう言って校舎の窓を指差す。
あそこからって…身を乗り出すか目を凝らすかしないと見えないんじゃ…?
考え込んでいると、急に右手を引かれて歩き出す。
『国見くん?教室あっちなんだけど…』
国「保健室です」
『いや、保健室なんて…』
国「手首。隠せてないですよ」
チラッと自分の手首を見て、ギョッとした。
血が滴り落ちてる。
うわぁ、結構ザックリいってるかも。
私はそのまま保健室に連れてこられて、先生が居なかったから国見くんに処置してもらってる。
自分でやると言っても聞いてもらえなかったのだ。
『ありがとね』
包帯を巻き終わった国見くんにお礼を言えば、
国「もっと早く行くべきでしたね」
私の手首を包帯の上からそっと撫でながら、なんとなくシュンとしてる国見くんの頭を、空いてる右手で優しく撫でる。
『国見くんが来てくれたから、これだけで済んでるんだよ』
ね?と目を合わせて言えば、渋々ながらも頷いてくれる。
『あ、そうだ。このこと、みんなには内緒ね』
特に徹は煩いから。と苦笑いしながら言えば、
国「英」
『ん?』
国「内緒にする代わりに、俺のこと英って呼んでください」
一瞬キョトンとしちゃったけど、国見くんって意外と可愛いとこあるんだな。
『ふふっ、ありがとね、英』
そろそろ行こっか。と微笑みながら言って保健室を出ると、やっぱユキさんズルいですよね。とボソッと呟いた英が後からついてくる。
そして2人で並んで教室棟の方へ歩き出した。