第6章 【猿飛佐助】無知に基づいた論証
「いつもいつも、お世話になり…ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ」
「御礼の気持ちを少しでも、佐助様にお伝え出来ればと…思い、姫様にお手伝い頂いてご用意しました。
どうぞ、受け取って頂けませんか」
千花は少し震える手で、風呂敷の一番天辺に置かれていた包みを取り出し。
佐助の方へ、おずおずと差し出す…
目をきゅっと瞑り、頬を赤らめ。
流石の佐助でも意図を汲み、自惚れずには居られないその表情。
「…えーと、まずは、ありがとうございます」
佐助は、受け取った包みをしげしげと眺め。
そして風呂敷の中から覗いている、他の包みと見比べる。
あからさまな違い――大輪の花飾りに気付き、確証を深め。
そして、その逸る鼓動がこちらまで伝わって来る様な千花の表情を、見る…佐助の表情を隠すように、レンズがきらり、と光る。
「ついつい、忘れかけていた」
「…え?」
「俺も確かに、此処で生きているということ。
何処か第三者のような、そんな目線でずっと居てはいけないな」
まるで、独り言のような…
しかし確かに自分に向けられたと思しき、佐助の言葉の意味を考え千花は首を傾げる。
佐助はそんな彼女を見て、ほんの少し表情を緩めた。
彼にしては精一杯の笑顔に、千花も何とか気付き、一層頬を赤らめる――