第6章 【猿飛佐助】無知に基づいた論証
「何してるんだ…千花」
その頃。
彼女の部屋の屋根裏では、佐助がその様子を見つけ、驚きを隠しきれないでいた。
安土に呼ばれたはいいものの、なかなか出番がないな、と様子を見に来てみたら。
自分を呼び出した張本人の彼女と、軒猿として同僚の筈の千花…いつの間に知り合い、これ程まで仲良くなったのか?
千花にはよく、彼女の部屋の様子見を頼んでいた。
流石に女性の部屋に張り込み続ける訳にもいかない…と、配慮の末だったが。
その間に仲良くなるような機会があっただろうか、と佐助は首を傾げる。
とは言え、二人の会話を聞き続けるのも野暮というものだ。
よもやただ彼女を手伝っている訳でも無いだろうし、千花にもバレンタインの贈り物をしたい相手がいると考えるべきだろう――
およそそう言った、惚れた腫れただのに疎そうな同僚の姿を思い返しながら、佐助はいつも通りのルートを辿り。
人気の少ない場所に出て、城から離れる筈だった――
「佐助。またこそこそと何か嗅ぎ回っているのか?」
地面へと下り立った背後から突然声をかけられ、流石の佐助もビクリ、と肩を震わせる…しかし、聞き馴染みのある声にゆっくりと振り返った。
「…光秀様。どうも、お邪魔してます」
「くくっ、許可した覚えは無いがな。全く、命知らずにも程がある――お前も、あの千花という娘も」