第6章 【猿飛佐助】無知に基づいた論証
「あっとうてき…圧倒的女子力の欠如…」
千花には分からない呪文の様な言葉を呟くと、彼女は台替わりにしていた文机に突っ伏した。
ばさり、とくちゃくちゃになった千代紙がバラける。
「姫様、これなら…此処を折り込むだけで見栄えが良くなりますよ?」
「うぅ…ありがとう千花ちゃん…!とっても器用だね…」
秀吉に貰った千代紙で、箱詰めにした花梨糖を包装していく。
斜めに巻いてみたり、箱の上で扇の様に広げてみたり、この時代には無いはずのキャンディ形にしてみたり。
バリエーション豊富な千花の包み方とは異なり、彼女は箱包み一辺倒、しかも不器用さが滲み出ていた。
せっせと、包みを手直ししていく千花を彼女は微笑ましく見つめる。
「…その、お花がついたのが例の彼、のかな?」
箱包に、千代紙で作った花をのり付けした、あからさまに特別な一つを指さすと。
千花は図星をつかれ、顔を真っ赤に染める。
もう夕暮れも近い。
一日を明日の準備に費やし、二人はヘトヘトだった――とは言え、感謝を…愛を伝えたい相手ならお互い沢山いる。
「今日は夜なべだねー、千花ちゃん」
「…はい、姫様」
二人はまた、顔を見合わせ笑う――