第6章 【猿飛佐助】無知に基づいた論証
「此処に取りい出したるは、俺が大事に取っていた高級な白糖なんだが」
「うんうん!勿体ぶらずにやっちゃってよ、政宗っ」
「まぁそう急かすなよ…っと。それを茶漉で細かく、振るいかける」
「わぁっ…政宗様、とても美しい見た目になりました」
きらきらと嬉しそうに笑う二人に気を良くしたのか、更に政宗のアレンジは続く。
「甘ったるいのばかりじゃ飽きるからな」
「白胡麻!香ばしくていくらでも食べれそうっ…じゃんじゃんかけてっ」
「更にこんなのはどうだ?」
「今度は黍砂糖ですね。黄色いぷつぷつが可愛らしいです」
きゃっきゃと三人で作業を終え、気づけばてんこ盛りの花梨糖が積み上がる。
それを見て、二人は満足げに息をついた。
「流石政宗っ!ほんとにありがとう!」
「良いってこった。礼ならこの花梨糖で充分だ…ってぇ!!」
てっぺんの一つを取ろうとした政宗の手を、二人が目敏くはたき落とす――
「ふふ、残念ダメでーす」
「政宗様、申し訳ありません…ばれんたいん、までお待ち下さい」
「あ?ばれんたいん…?」
「明日になったらちゃんとあげるから、安心して!じゃね、ほんとありがとー!」
花梨糖を抱え、風の様に去っていく二人を見送り…それから片付けの済んでいない厨を見渡し、政宗はため息をつき、独りごちる。
「そう言や…千花。あんな女中いたか?
…まぁ、いいか。彼奴も楽しそうだったしな」
そして持ち前の楽観さで、大きな疑問を無に帰したのだった。