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【イケメン戦国】短編集✲*゚

第5章 【徳川家康】日和姫





「家康様、おはようございます。朝から鍛練など、精が出ますね」
「…おはよう、千花姫。朝から覗きなんて、良い趣味してるね」


「あら、覗きなんて、お言葉ですね。たまたま通りがかっただけで、別に覗く気もありません」
「ふーん…そう」



意地悪な言い方だけど、会話が成立した事が嬉しい――
千花は引き寄せられるように、射場に上がる。



「覗く気は無かった、んじゃないの」
「家康様を見る訳ではありません。道場の雰囲気を見に上がらせて頂いたのです」



千花はくるり、と辺りを見渡す。
そして、端の方に少し古びた弓が立て掛けられているのを見つけた。
歩み寄ると、咎めるような家康の声がかかる。



「その弓は、随分前からそこにある。持ち主も分からないから、無闇に触らない方がいいよ」
「少しお借りするだけです。私もこう見えて、昔、多少嗜んだ事があるのですよ…?」



持ち前の好奇心が、むくむくと湧き上がってきて。
弓を手に取り、持ち上げ…そして、弦をまるで爪弾くように弾いた、その時。



「あっ…!!」
「千花姫!」



置き去りにされたことで劣化していたらしい、弦はぱちん、と音を立てて切れた。
勢いよくしなった弦は、さっと千花の指を掠める。
鋭い痛みが走ったと思ったが早いか、じんわりと血が滲んだ。


血相を変えて駆け寄ってきた家康が、ぐっ、と痛い程の力で千花の指を取った。
千花が痛さに顔を顰めるも、更に力を入れて患部の上程を抑え、止血する。

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