第5章 【徳川家康】日和姫
「…あの、ごめんなさい。考えの無い事を申しました」
「もう慣れた事だ、構わねぇよ。誰しも、見た目から想像がつかないような秘密を隠し持ってる物だ…千花姫も、そうだろ」
政宗の悪戯げな物言いと表情、にも関わらず。
千花は取り繕うことも出来ず、肩を落とす。
「そんなに申し訳なく思うなら…そうだな、姫の秘密も一つ。バラしてくれればそれでお互い様、だ」
「…秘密、ですか」
「あぁ。何かあるだろ?今、思い浮かんだって顔に書いてある」
千花の目が、思案するように瞬きを一つ、二つ繰り返す。
その度長い睫毛がぱさりぱさりと、少し潤んだ瞳の周りを忙しく舞う。
これでは、仰々しく立つ白百合等とは程遠いな、と。
秀吉や光秀、昔馴染みと笑いながら酌み交わすお市の方を、横目で見ながら政宗は思う。
「…ひみつ、では、政宗様…聞いてくださるかしら」
「あぁ、何なりと」