第5章 【徳川家康】日和姫
「はぁ…付き合ってられないね」
家康が、話は終わりだと言わんばかりにため息をついて立ち上がった。
「信長様、これにて失礼します」
「夜は彼奴らの為の宴を催す。また参れ」
「…御意」
不本意だ、という雰囲気を端々に漂わせながらも、肯定の意を示すと。
家康は真っ先に、天主を後にした。
その後ろ姿をちらり、と見て溜息をつく、千花の姿に。
全てを見通しているかのように、信長は苦笑する――
「千花、日和って居ては、前に進む事など出来ぬぞ」
「言われずとも…わかっております」
「千花、一旦下がりましょう。お兄様、少し疲れたので休ませて頂きますね。宴を楽しみにしております」
「俺が腕によりをかけますのでどうぞご期待下さい、お市様、千花姫」
「政宗様が?それは…とても楽しみです」
そう言って笑う千花の表情は、先程までとは違い弱々しく…しかし、より魅惑的な物に、皆には見えた。
「うう…お市…私、どうにも駄目みたい」
「何を言っているの、千花。此処が肝要、勝負所でしょう」
「あんな事を仰る殿方とどうにかなろうなんて…そもそもが間違ってたのよね…」
「それは否定しないけど。何故寄りによってあんな天邪鬼を?何度聞いても納得いかないわ」
「だって!だって、ね…?」