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【イケメン戦国】短編集✲*゚

第5章 【徳川家康】日和姫





そのまま、暫し武将達が和やかな雰囲気で歓談していると。
入っても宜しいですか、と鈴を転がすような声が聞こえてきた。


信長はその声に黙って秀吉を見やる。
秀吉は勝手知ったる様子で立ち上がり、襖を開けてやった――





「兄上、お市にございます」



政宗と三成は、思わず息を呑んだ。
まるで咲き誇る大輪の薔薇のように。
白い肌に黒い髪、赤の打ち掛けが映える見目麗しい女人が、深く下げていた頭を上げた。


そしてその名を、知らぬはずも無く。
湖北の名家、浅井家に嫁いだ信長の妹君。
この戦国一の美女とうたわれるお市の方…礼を失してはならない、挨拶しようと姿勢を正す――



「…ふん、礼だけは身に付けたようだな。嫁に出して正解だったか、お市」
「ふふ、そうでしょう…?お兄様っ!!」



思わず唖然と口を開ける、彼等を余所に。
信長が腕を広げた中に、お市が飛び込んだ。



「嫁に行った身で、出戻りとはな」
「長政様は、そのような事を気にされない大きな御方。久方振りにお兄様に会いたいと言えば、いつでも帰って良いと申されたので」


「…それが、戻った理由の全てでは無かろうに」



全てを見透かすような信長の眼に、お市はふふ、と満足気に笑んだ。
その表情は信長と兄妹であると、皆に再確認させるに相応しい物で。
昔馴染みの秀吉などは、変わらないな、と苦笑混じりの笑みを浮かべる。



「流石、お兄様。今日は連れがおりますので…共に安土に逗留する許可を頂きたく」
「どうせ、聞かずともいつもの彼奴であろう。良い、許可しよう」


「ありがとうございます。お兄様のお許しを頂きましたよ、千花!」


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