第4章 【徳川家康】ちびっこシンドローム
「きのうと、同じところ?」
「そうなの、そこで竹千代のおうちの人と待ち合わせしてるんだよ」
二人で手を繋ぎ歩き、辿り着いたいつもの野原。
春の花々が咲き乱れるそこは、今日も変わらず綺麗で。
青く晴れた空、遠くに望む緑の山々、昨日と変わらないコンディションのように感じる。
「昨日も思ったけれど、ここ…すっごく、きれいだね」
「あ、そうでしょ?私は秋も好きなんだー!ススキが一面に風に揺れてね、」
他愛もない話をしていると、ざわり、と近くの木枝が音を鳴らし揺れた。
そして、生暖かくて気味の悪い空気…
昨日と同じだ、と息を呑む。
何かを感じ取ったのか、隣の竹千代の表情も固い。
「…きっと、秋の此処も竹千代は好きだよ。また、見てね」
「…わかった」
ワームホールが発生したら、竹千代とは離れた方がいい、と佐助くんに言われたのに。
温かくて、小さな手をどうしても離し難くて、むしろぎゅっと力を込める。
どうしても、目の前では絶対に泣きたくない…これ以上心配をかけたくない、と奥歯を噛み締める――
「千花…ありがとう」
その言葉に、俯いていた顔を上げる。
竹千代が、真っ直ぐにこちらを見ている――なんだか、昨日初めて会った時より少し大人びて見える、その表情。
「つらくても、さみしくても、きっとあんたの事を思い出したら、がんばれる」
「…ふふ、それは光栄だぁ」
「また、ぜったい、会えるよね」
ぶわっ、と音を立てて。
風に巻き込まれる、その姿が見えなくなる。
繋いだ手の温もりだけで、まだそこに居るのだ、と確信を持って――
「会えるよ!竹千代が、私のことまた、見つけてくれたらっ…!!」