第4章 【徳川家康】ちびっこシンドローム
「突然だけど、明日の今日と同時刻くらい。恐らく、また小規模のワームホールが観測出来ると思う」
「あ、明日…!?それはまた、随分突然だね…」
布団の中の、竹千代の顔をそっと、覗き見る。
きゅっとお行儀よく閉じられた口元、
胸の上で組まれた手。
相変わらず、子供らしくない。
でも、そうせざるを得ない環境で育ってきたのかな、なんて考えてしまって――
「千花さん、母性でも湧いた?」
「…ふふ、そうかも。凄くね、竹千代と離れ難いって思ってるの」
「あの野原に行かなければ、恐らくワームホールに巻き込まれないで済むよ」
意地悪な物言いに、軽く佐助くんを睨みつける。
ごめん、と彼は両手を上げた。
選択しようのない、問題なんだけど。
どうしても選べというなら、迷いなく彼を選んでしまう。
ごめんね、と寝顔に向かって呟く。
だってね、今だって、寂しくて仕方ないんだよ――
佐助くんがその晩、皆に知らせてくれたのだろう。
次の日の朝、殊更に皆が竹千代に優しかった。
「おら、お前の好物ばかり揃えてやったぞ!幾らでもお代わりはあるからな!」
「まさむねさん、ありがとうございます」
七味をかけずに食べ出す竹千代の頭を、政宗が嬉しそうに撫でてやっている。
「竹千代様、どうぞ息災で…そのまま真っ直ぐ、お育ち下さいね」
「くく、それでは…彼奴が歪んで育った様な物言いだな、三成」
「そ、そのようなことは…!!あ、」
光秀さんにからかわれ、お茶をこかした三成くんを竹千代が小さく睨み付ける。
ここから家康の三成くん嫌いが始まっていたのかも、なんて笑ってしまう。