第4章 【徳川家康】ちびっこシンドローム
「それにしても…そんな風にしていたら、まるで本当の親子のようだな、千花!」
秀吉さんが、空気を変えるように明るく言ってくれる。
その言葉に泣くのも忘れて、思わず竹千代と顔を見合わせた。
「だ、誰と誰が…」
「親子…!親子だって、竹千代ー!こんな可愛い子供…嬉しいぃいい…!!」
秀吉さんに噛み付こうとする竹千代を遮り、またぎゅーっと抱き締める。
もう抵抗するのも諦めたのか、為されるがままの竹千代をいい事に、もちもちのほっぺたをすりすりさせてもらう。
竹千代は真っ赤な顔をして、眉根を顰めた凄く嫌そうな表情をしているけれど…残念ながら、その表情には耐性がついているから大して堪えもしない。
「はは、凄いな。いつもわかり易いけど、更にダダ漏れだ」
「千花、簡単な事だろう?家康と子を為せばそれが出てくる」
「いっ…!!いやいやいや!そんなっ…!」
「貴様、悪くないという顔をしておるな」
「の、信長様っ…!」
皆に囲まれ、笑い合う。
一人一人の顔を見渡して、ほんの少し、皆にバレない程度にため息をついた。
その日の晩。
渋る竹千代を無理やり布団に引きずり込んだ。
春先とはいえ、夜になったら流石に冷える…子供の体温が温かくて、竹千代に頼んで手だけ繋がせてもらっている。
うとうとと、温もりに引きずられるように微睡んでいると。
少し言いよどむような、遠慮がちな竹千代の声が聞こえてきた。
「ねぇ、千花」
「なーに?どしたの、竹千代」
「なにか、困ってることがあるの」