第4章 【徳川家康】ちびっこシンドローム
「…嘘、ね。ついちゃった」
「…え?」
「家康に、寂しくないよって。疲れてるなら寝てていいよって。ほんとは久しぶりの逢瀬だったから、市を見て回ったりしたかったの…でも、疲れてそう、だったから」
私の珍しくか細い、消え入りそうな声を。
三成くんが一生懸命聞いてくれる。
「あの時、ちゃんともっと話したり、歩いたりするだけでいいから、一緒にいたいって言えばよかった…そうしたら、ワームホールに巻き込まれる事も無かったかも、なのに、」
思わずぐずり、と鼻を啜りあげる。
三成くんが何を言おうか、考えあぐねている様子で…変なこと言ってごめんね、と謝ろうとした、その時。
「いたっ…!え!?あ、どうしました、竹千代様…?」
じろり、と三成くんをにらみ上げる竹千代。
皆といたはずなのに、どうして――振り返ると、心配そうに皆が此方を見つめている。
竹千代は突然三成くんの足を蹴ったらしく、どうしたの、と聞こうとしゃがみ込む――小さくなっても強さの変わらない、「彼」の真っ直ぐな目が、此方をじっと見つめる。
「千花、こいつに泣かされたんでしょっ…」
「…え?三成くん、に?」
「おまえ、千花をいじめるな!」
ぎり、と歯を噛み締めて。
三成くんを睨み付ける竹千代。
やっぱり家康なんだ、小さくてもこうして私を守ってくれようとするんだ、と思うと。
我慢していた筈の涙がぼろぼろと零れてくる。
「うぅううえぇんん…!!竹千代ぉお!!」
「わ!?ちょ、ちょっと何…!」
「三成くんは悪くないの、でもありがとっ…だいすきだよぉおおお!!!」
ぎゅーーっと、小さい体を抱き締める。
竹千代はバタバタと暫く抵抗していたけれど、私が泣いてるのに気付いて、じっと大人しくなった。
「…ふふ、今回は泣かせたのは竹千代様、の様ですね」
「うるさい、俺のせいじゃないでしょ。三成、だっけ、おまえ…なんか、むかつく」