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【イケメン戦国】短編集✲*゚

第1章 【織田信長】恋に揺蕩う





「…さぁ、千花様。ご覧下さいな」
「…っ…!」



それからきっかり半刻。つるさんの合図で、姿見の前に姿を移した私は思わず息を飲んだ。黒地に朱色や金の錦糸で華々の装飾がされた、美しい小袖を羽織らせてもらい。いつもはたかない粉が被った肌は白く、口元に薄く引かれた紅が艶やかに女を主張する。



「千花様、何とお美しい」
「殿との逢瀬に恥じない、見目麗しい姫様ですこと」
「あ、ありがとうございますっ…!」


ここに連れ込まれた初め、突然四人もの女性に囲まれ着ていた着物を剥ぎ取られ。なす術もなく固まっている時には、どうなる事かと心配だったけれど。

まるで自分では無いようなあでやかな姿に、思わずくるり、と回ってみる。千鳥の形に大きく結ばれた金の帯が、装飾のない背中に映える。


「殿、こちらへ…」


するとそこに、つるさんに導かれて信長様がやって来た。何処か気恥ずかしくて、俯いたまま出迎えると。伸びてきた手が顎を掬い、そっと上を向かされる。


「あ、あのっ…!!」


何も言わず、まるで品定めをする様に。そろそろと目線を滑らせていく信長様。緊張がピークに達して声を上げると、はっと我に返ったように、手を離した。


「鶴、貴様ら、上出来だ。褒美は南蛮の菓子を持たせる。皆で茶でも煎れてゆるりとするが良い」
「お気遣い、痛み入ります。行ってらっしゃいませ」
「千花様、殿、お気を付けて!」


来た時と同じ様に、手を取られ…ただし、今度は先程までのような強引さはなく。酷く優しい、恭しい手つきで私の手を掴むと、信長様はまた歩き出す。その変化に戸惑っているのか、はたまたいつに無い状況に高揚しているのか、どきどきと速まる鼓動のまま、ついて行く。


「馬子にも衣装だな、千花」
「…失礼ですね」
「何を言う、褒めているのだ。想像もしていなかった愛らしさにな」


本気とも冗談とも取れない褒め言葉。薄く笑う信長様の顔が少し赤らんで見えるのは、少し速い歩調のせいなのか、それとも…考えている間にも、足はどんどんと進み。城を下って、賑やかな町へとおりてきた。


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