第4章 【徳川家康】ちびっこシンドローム
佐助君の言葉に安堵し、漸く深く息をつく。
その時、私たちの間ですやすやと寝息を立てていたちびやすがうーん、と小さく身じろいだ。
「あ、ちびやす…お目覚め、なのかな」
「ちびやす…可愛い呼び名だけど、この頃はまだ恐らく幼名で呼ばれているはず。竹千代様、って呼んであげるといい」
「わ、わかった。そっか、この時代は小さい時と名前が変わるんだったよね!呼び間違えないようにしないと…!」
「じゃあ、俺は驚かすといけないから一旦消えるよ。また、何かわかったら報告するから、頑張って」
佐助君がそう言って足早に姿を消す、とほぼ同時に。
いえやす…竹千代の長い睫毛がぱさり、と小さく震え。
そして、お馴染みの翡翠色の瞳が覗いた。
それを確認して、ああ、やっぱりこの子は家康なんだ、と確信する――
「竹千代、おはよ」
声をかけてあげると、ふるり、と身震いして、完全に目を開け、辺りを見回し――そして、目が合った。
「な、なにやつっ!!」
さっと身を起こし、構える竹千代。
私は驚いて、そして当然か、と漸く気付く。
お昼寝してて、突然外で目覚めて、知らない女の人がいたらびっくりするよね…
「え…っと、ね。私は、千花といいます」
突然の自己紹介に、竹千代が驚いた顔でこちらを見つめる。
ぐりぐりと大きな目が、こちらを見つめている。
かわ…おっと。
にやけそうな口元をぐっと引き締めて、至極真面目に接さないと、と思い直す。
そうだった、初対面の家康は――